幕間というには余りにも短く駄文すぎる何か。
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「ねぇ、知ってる?」
隣に寝転がって日向ぼっこをする片割れに声をかける。
「うん?」
主語を省いた問いかけに、彼は一応反応を寄越す。
寝ては居なかったようだが、かなり眠たそうだ。
無理も無い、熱すぎず寒すぎず、陽射しも強すぎず弱すぎず。
一面に広がる野原の草は程よいクッション、あるかなしかの風に
その白く薄っすら紅を宿す花の香りが柔らかく漂っている。
「シロツメクサの花言葉」
言いながら、手元は休めない。
ぷちり。
ぷちり。
ごめんね、と思えど、こんなに一面に咲いているのを見てしまっては
これを作らずにはいられない。
「……確か、幸運、とか、約束…とかそんなんじゃなかったさ?」
反応を返しただけで眠ってしまったのかと思いきや
どうやらちゃんと思案してくれていたらしい。
眠たそうな声なのは変わりないが、そういうところは律儀な片割れだ。
「うん。それもあるね。それ以外は?」
「…知らねぇかも。他があるのさ?」
大体良い長さになったのを確認して、輪になるように仕上げつつ
私は答える。
「………復讐心、感化 …っていう花言葉も持つらしいよ」
少し驚いた顔で此方を向いた片割れの額に、
らしくないよね、と、出来たばかりの花輪を乗せて笑った。
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鮮やかに繊細な青。
優しい色合いは、私の心に残る傷跡を疼かせる。
あの人の眼差しに…、あの人の纏う雰囲気に良く似た、青。
「……忘れるわけ無いじゃない」
塞がらなかった傷は、凍ったままの心は、慈雨で溶けた。
傷は傷では無くなった。傷跡になった。
けど。
全てを忘れてしまったわけではない。
否。
忘れられるわけが無い。
これは私の咎。
故郷を滅ぼした私の。
恩を仇で返してしまった私の。
貴方という存在は、私にとって許しであり、断罪でもあるのだから。
どうして忘れることなどできるだろうか。
鮮やかに繊細な、勿忘草の花言葉。
――私を忘れないで。
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…花言葉見てたらついつい。
スーシャとヤシースには、どうにも明るい花言葉は似合わないですねぇ。
それは翼人になってても言えるけれど。
やっぱり、心の何処かで自分は裏切り者で、
咎人だって今でも思ってるんだろうな。