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幕間:ゆめをみるひと

※ゆめをみるひと診断メーカー(https://shindanmaker.com/562707)にて
 出た診断をベースに作成
 
続き

高い天井。それにつられたように大きく高く取られた窓。
窓を重厚に彩るカーテンは深い紅、材質はビロードだろうか、重たくも艶やかな。
そんな窓から差し込む光はどこか弱く、けれど白く、あぁ冬なのか、と何故か思う。

――そしてその光の差し込んだ先、自分の真正面には
年月と威厳をそのまま凝って造ったような大きな大きな机。
執務机だ、と、やはり直感的に何故か思う。


どこかで見覚えのある部屋だな…?
そんなことをぼんやり思いながら、ふ、っと視線を横にずらして
思わず息を呑む。

自分の隣に、それも超至近距離に、女が一人いたからだ。
何の気配も何の物音もさせずに。

……いや。
何の気配も、何の物音もさせていないのは彼の方なのかもしれない。
彼女は彼を見てはいなかった。
彼が存在していることすら認識できていないようだ。
ただ、真っ直ぐに前を―――否、どこか遠くを見ながら、彼女は泣いていた。

しかして、彼が驚いたのは、超至近距離に女がいたからでも
彼女が泣いていたからでもない。
彼女が誰だか痛いほどに知っていたから、そして、部屋の光景に
これがありえないことだと瞬時に理解したから驚いたのだ。

呑んだ息を吐き出して、何故、を問う代わりに伸ばした手、
それが彼女に触れるか触れないかのところで
溜息と共に、彼女が密やかに言葉を紡ぐ。


「…やっと…、……やっと終えられるわ……」


え、と思う間もなく暗転する光景、吹き飛び交じり合い黒くなる視界。
濁流に流されて押し上げられたように、ぽっかり、意識が再度浮かんできた時には
もう先程までの光景―――夢の光景は何処にもなかった。

見慣れた木目の天井。薄暗い部屋。

「……どうして……、」

それはありえてはならない光景だった。受け継いだ記憶ですら無い。

もし、周囲の期待に応えていたら。
もし、それに応じて立派に立ち振る舞えていたら。

そうしたら、ありえたかもしれない光景。進んでいたかもしれない未来の一つ。
「終えられる」と言っていたからには、きっと責務を全うしきったのだろう、
最上の、理想的な未来の一つ。


――ただ、其れを彼女が選んでいたのなら、彼は、今、此処に存在し得ない。

「なんだってまぁ…あんなもん見たんだか……」

はぁ、と溜息一つ。
二度寝するにはあまりにも目が冴えていて
そのまま起きるには余りにも心に負荷が大きすぎた。

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↓↓診断結果↓↓
双つ姿の翼人は夢を見る。そこは二度と戻れないあの場所。
隣には理想を手にした自分がいて、静かに泣いている。
双つ姿の翼人は起きたらきっとどうして、と呟くのだろう。そんな、ゆめをみるひと。