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幕間:漆黒の挑戦状

「オニキスねぇ…」

考え事を撹拌するかのように、絶妙なバランスを保ち椅子を揺らしながら、
視線を宙に…どこにも合わさぬまま、部屋の主はぼそっと呟いた。

続き
黒い輝石類は割と多い。
光も通さぬ漆黒…となるとオニキス、スピネル辺りになるだろうが
黒ならダイヤの他ショールやオブシディアン、ホークスアイなどもある。
遊色効果持ちも視野に入れるならオパールやラブラドライトもありだろう。
ヘマタイト…は黒ではあるが光沢が金属質なので好みが分かれるか。
ともあれ、『彼』のことだから、きっと黒い石の中でも特に高価と言われる石を
指定してくるだろうと予想していたのに。

…とはいえ。

椅子の揺らぎを静かに止め、手元のデザインラフに視線を落とす。
先程まであーでもないこーでもないと『彼』からあれこれ聞き出し、言い合って
出来上がったデザインの1/3以上を黒い石が占めている。
これだけのサイズと数を揃えるとなると、オニキスは妥当な選択だろう。
広く一般に馴染みの深い石とはいえ、瑪瑙の一種。
最高品質のものは間違いなく“玉”に属する。宝石と言って間違いは無い。

さて、どうやって材料を揃えたものか。

組成は理解しているし、魔力石として創造するのもあり、ではある。
しかし、それではあまりにも味気ない。
依頼を受けて創るのだ、きちんと大地のエネルギーが凝縮されたものを使いたい。
特に相手が『彼』であるなら尚更の事。
そもそも、この手のモノを専用で作る際にはただの装飾品で終わらせる気など全く無い。
これは彼の勝手な拘りだが、使い手にとって愛用できるものであるのは当然のこと、
護符や魔力媒体としても機能するよう、使う石は力の強いものを選んでいる。
今回の場合、護符というよりは魔力媒体としての機能に特化するだろうが…
使い手の魔力に耐えられるレベルのモノとなると、相当に厳選しなければ。

―――質も力も最高級のものが複数必要になる。

「…こりゃ難題だ。原石から探すべきだな」

言葉とは裏腹に表情はとても楽しそうに、口元を歪めながら呟く。
趣味だからこそ、自分勝手に課したものだからこそ、こういう難題は楽しくて仕方ない。
楽しい難題であればあるほど、俄然やる気が…否、闘志が燃えるというもの。

「? どうかして?」
「んぁ? …あぁダーシェか、丁度いいところに。俺ちと出かけてくるわ。
 次の遠征リミットまでには一旦戻る―――が、ぎりぎりになりそうでね。
 やばかったらディドに幻影作らせて行っといてくれ」
「え? 急に何を……」
「頼んだぜ!」

言うが早いか、彼は目的の物が入手できそうな世界へ転移するため
ぱっと術を組み上げると即座に発動させる。
急に負荷の無くなった椅子が、ガタンと音を立てて床に倒れ込む。

後に残された彼女は暫し呆然とした後、呆れのため息をつき
椅子を元に戻すと、彼の使い魔に事を伝えようとその場を去った。

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第12期に貰った依頼に関連した幕間。
燃料投下 …のつもり(謎

  • 2014/08/29
  • 創作モノ::幕間/AUC