記:ディド
「……あれ?」
見慣れない黒い書物。
それがリビングの机の上、無造作に置かれていることに気がついた。
何だろうと近づいてみれば、相当に禍々しい気配を発していることが分かる。
――しかもこれは…コレ自体が“生きて”いる。
触るのを躊躇うくらいの禍々しさだから、断定は出来ないけれど。
直感的にそう感じた。
「…全く…一体どこからこんなものを…」
誰が持ち込んだかは直ぐに見当がついた。
というよりも、部隊でこんなものを持ち込む人物は一人しかありえない。
そう…僕の主人でしか。
ダーシェ嬢も時々変なものを持ち帰って来たりするけれど、こういう魔術関係の品を
…特に不思議生物系に当てはまるものを持ち帰るのはまず間違いなく主人だけだ。
過去にはモミの木のバケモノを『番樹』と言って飼い慣らしたり、
生きた化け物ケーキを『番台所』と言って貰ってきたり…
その経緯から照らし合わせると、今回のこの子は『番書物』になりそうだけど。
「如何した」
やれやれ、と溜息をついた所に掛けられた声。
主人よりもずっと低いその声に驚いて、はっと振り返る。
戸口に立っていたのは、白髪紅眼の男性――Gie殿。
前の巡りが始まって直ぐの頃、どこからともなくふらりと現れ、
主人と2・3の押し問答の末、僕らと生活を共にするようになったけれども
今まで視線が合うことは有れど話しかけられたことなど一度も無い。
……そんな相手に話しかけられて動揺も緊張もするな、なんて無理な話。
「いえ…主人がどこかから危ない書物を持ち込んだようでして」
「ほう」
内心の緊張を隠しながら返せば、それは面白そうだ、と此方に近づいてくる。
……本体時代の記憶を遡ってみても、この方と…否、この方のオリジナルとも
二人きりになったことなんて一度も無く、正直、背中に変な汗をかきそうになる。
「ほぉ…魔術に疎い俺でも分かる程とはな。これを綴った者は相当の遣い手であろう」
「はい…。しかも、宿った魔力を核として自我を形成しているようです。
ある種の創造魔法と言って過言ではないかと。
―――全く…どこから持って来たのから…どう考えても禁書クラスですよこれ…」
溜息混じりに思わずそうぼやいた僕を面白そうに見下ろして
ふっと彼は笑う。
……そんな表情が出来たのか、と思うくらい、優しい顔で。
「案ずるな。
あやつは無法に見えても一線は守る者であること、お前が一番良く知っておろう?」
「………ええ…」
「ならば信じてやることだ。とはいえ、こんな所に放置しておくのは感心せんな。
お前やダーシェなら兎も角、イディが触っていたら毒となっていたであろうよ」
言いながら、発せられている禍々しさなど無いようにひょい、と書を取り上げられる。
僕ですら触ることは躊躇われるくらいの禍々しさなのに、
この部隊で最も闇の属性が強い彼にとってはなんてことは無いらしい。
「これは俺が預かる故。返して欲しければ部屋まで来い、とヨクトに伝えておけ」
久しぶりに奴をからかうネタが出来たわ。
そう、至極楽しそうにリビングを出て行く彼の背中を見送り。
何となく…父さんが居たらこんな感じだったのだろうか、と、そんなことを思ってしまった。
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某魔王殿から一冊譲って貰った記念。
でも折角譲って貰ったのに即刻取り上げられちゃってるじゃないか!w
翼人は時々ずさんです。元が元だから仕方ないね(ぇ
この後、すっごい嫌な顔しつつも本を返して貰いに行くのは確定。
友人から譲って貰った物だから、幾ら同じ部隊内に有るとはいえ
自分の手元にないのは部屋を訪れるより嫌がる気がする。
……そもそも光属性(≠聖)を持つ奴が超闇属性の禁書なんて持ってていいのか!?
とかそういう話も無くはないけど
翼人って闇とか冥に対して物凄く親和性を持ってると思う。
本来光属性なのに、聖の要素がほぼなくなってしまったのがその理由
ということで一つ(意味不
