届いたばかりの懐中時計。
前からちょっと気になってた品なもんで、こうして手に出来るとやっぱ嬉しい。
傍から見るとすっげぇ楽しそうな笑顔を浮かべてると思う。
実際ニヤけてしょうがないんだけどさ。
この時計の作者は、以前一度だけ一緒に戦った事がある方…だったと記憶している。
本人格も吸うわけじゃないのにその方の作った煙草を買ってた。
縁があったからって訳じゃない。品に込められた言の葉に惹かれてのこと。
今回俺が手を出したのも同じ理由…まぁ、気持ちに精度が左右されるところにも
惹かれたのは否めない。中々に粋じゃねぇか、と。
本人格が聞いたら顔をしかめそうだけどな、正確じゃないなんて時計の意味がないって言うだろう。
けど、本人格だって自分の時計は常に5分進めているんだから…正確っていえるのかどうか?
常に5分進んでいるって意味では正確か...
まぁ、そんな事は言われないから良い。
俺がコレを買ったことは言うつもりがないから。
時計を右手のひらに載せ、左手で覆うようにして呪を載せた言の葉を紡ぐ。
紅い魔方陣が右手を――時計を中心に展開、即時に時計の中に吸い込まれる。
「コレでよし…っと」
施したのはちょっとした結界。本人格に気が付かせないための。
某所で用いられているという結界の話をヒントに、極々簡易なのを、な。
これで本人格にこの時計が知られる事はないだろう。
誰かがそのことを言っても、知らぬ存ぜぬを通せばすむだけの話。
―――コレは俺だけの時計。
どんな時を刻むのか…、楽しみさね!
