「買うか作るかしないの?」
「……私が表なの、長くないから」
存分に『面倒くさい』という意味を込めて返す。
そもそもこの姿になること自体、“自分たち”としてはあまり歓迎できない状況なのだ。
問題が無いなら直ぐにでも今までの姿に戻る。
その方が“自分”にとってもありがたい。
表に出ることは嫌いではないが、“自分”が表に出ているのはリスクが高すぎる。
特に傭兵であらねばならないこの世界においては。
しかし……そういうわけにはいかない故の今、であって。
それでも、少しの間堪えればまた“あちら”が表になれるはず。
前に変わったときは24時間で済んだ話。
あの時は超特急で無理をした、という点を考慮して
今回はもう少し掛かるとしても専用の服を用意するほどの時間は……
「主人…、長引くと仰ってましたよ。変わる前に。
こちらの世界の時間は僕達の体内時間と相当ズレがありますが、、」
「…………」
遣い魔からの指摘に小さくため息をつく。
…そういえば“あちら”がそんなことを言っていた気がしなくもない。
自らを構成する術式の細かい部分は全て任せているので、
“あちら”がそうだと言えばそうなのだろう。厄介な。
「ほら…用意した方が…せめて買った方がいいのではなくて…?
流石に男の時と同じ服だなんて…ヨクトだって、わかるけど……」
「……ああ。“自分たち”には変わりない、から。解決ね」
厳密に“あちら”と“自分”が“同一人物”かと問われれば、「否」ではある。
が、“自分たち”であることに変わりはない。
表に主に出ているのが“あちら”なのか“こちら”なのかの違いだけ。
例えるのなら、昼と夜―――ただそれだけの違い。
他者から見れば奇異かもしれなくても、わかりやすいのならそれでいい。
「え? いえ、そういう問題じゃなくて…。 ……もぅ……………」
これ以上議論しても無駄だと悟ったのだろう、説得を諦めてため息一つ。
“自分たち”の良く知る彼女と同じ反応だなとぼんやり思う。
「……わかったわ。でも、その格好をし続ける、というのであれば
どうしても妥協できない一点があるのだけれど?」
何?と視線で問えば、ずい、と何かを差し出された。
見れば、吊りベルトに酷似しているが、それにしても随分と短い。
何だろうと首を傾げる間もなくダーシェから答えが提示された。
「肩が落ちないようこれを使って。幾らなんでも無頓着過ぎだわ」
前の姿との体格差を考えなさい、と、強い口調でダーシェが言えば
その通りです、と、ディドも強い視線を向けたまま頷く。
妙に意気投合した二人の気迫に、是は押し切れない…と判断し
素直にそれを受け取ったのだった。
