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幕間:新地開拓 in DM

「いよいよ、ね」
『…? 何だ、緊張してるのさ?』

門へと向かう道を歩みながら、思わず口にした言葉に
椰子はとても意外そうな声を上げた。

続き

(そりゃ…。って、椰子は中に居るんだからわかるでしょ?)
『いや? 大きいものなら判るけどさ、細かいところまでは…
 つか、今のお前は楽しさの方が上回ってると見てたさね』

内(なか)はとても楽しそうな感じだぞ、と、彼は笑う。

確かに…、楽しい気分じゃないのか、と問われれば楽しい気分だと答える。
ワクワクする、というのが正しいのかな。純粋な嬉しさも有ると思う。
新しい居場所と仲間…って言っていいのかな…が出来る、と思うと。

でも、そこにはやっぱり不安もある。
一度お邪魔しているし、面識もあるし、私達についての詳細は何度も報告書で提出済みで、
したいことをさせてもらえる、と聞いていても。
そもそも『会社』というものに就職したことが無いわけで。
――ああ、国家…王宮を一つの会社と捉えるのなら、就職した事はあるし、
その運営を手伝った経験も本体から引き継いでるけど…
でもあれって謁見の間でその国の国王に対し、忠誠を誓います、って一言言えれば
それで通っちゃう部類のものだから。
別に本気の忠誠心なんて無くていいんだよね。
在籍してる間は城勤めします、迷惑な事はしませんって宣言するだけの話。
勤めをサボっても別に何か言われるでもなく…国から日当はでないけどね。
稼ぐ手段を他にも持ってる者にとっては余り重要じゃなかったから。

そんな事しか経験が無い私が、緊張するのはおかしな話じゃないはず。
それに…場合によってはやっぱり雇ってもらえないかもしれない。
会社に籍を置いても、殆ど居ない事になるだろうから…
その辺の不安もある。

『ま、気にしても仕方ないと思うさね。気楽に行こうぜ?
 何も就職しなきゃ遊びに行っちゃいけない場所って訳でもないんだしさ』
(…そうね)

椰子の言に、くすっと笑い。
気を取り直して、そろそろ見えるであろう門を求め、目を細める。

『そういや、就職希望理由とか聞かれたら何て答えるのかは決めたのさ?』
(ん? ああ、そこは素直に「楽しそうだから」って答えることにしたわ)

それでいいのかよ?と苦笑する椰子に、いいんじゃない?、と返す。
取り繕って綺麗事言うより、真っ正直なところを率直に言った方がいいと思う。
幾ら作っても仮面なんて簡単に崩されちゃうから。
だったら最初からそんなもの作らなきゃいいだけだ。
ちなみに、何がしたいのかと問われれば、できる事を、と答える気でいる。
それも偽りの無い本心。
――正直、何が出来るのか判らないのよね。
私達ができることで、役に立つ何かがあるのならそれをやりたい。
最初は勝手がわからないから、希望を言いようがない、というのもある。
適性とか既に居る方との相性とかもあるだろうし…
まぁ、先生やるのは無いだろうなぁ、って位??
何が出来るのかは1人と2匹が提出してた報告書から大体推測してもらえる筈。

そんな事を考えながらそれでも歩みを止めずにいると、ようやく
薄っすらと掛かった霧の先に、見覚えのある建造物が見えてきた。
それ以外は特に何も…砂埃も見えない。

―――どうやら、今日は兄弟喧嘩未開催のようだ。

  • 2011/02/24
  • 創作モノ::幕間/DK