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幕間:そらいろの。

続き
それは幸運を招く石、と言われる。
太古から人々を惹きつけて止まない、ただの青よりも深く濃い、藍の色。
黄鉄鉱の粒子が混じった様を見せる様は、あたかも宙と星のような。
あるいは異邦にて、砂塵を巻き上げた空のような――…


「偶然なんだろうけどな。それにしたって凄ぇ偶然」

依頼内容をまとめたデザインスケッチを見つつ、いつぞやのように
腰掛けた椅子を絶妙なバランスで揺らしながら彼は呟いた。

今回の依頼はワニ口式のネクタイピン。
銀色の下地に、タイバー部分はラピスラズリ、メイン部分はカイヤナイトをあしらう意匠の。

2つの青と銀色、という組み合わせに、彼はふっと過去に創った品を思い出す。
そして、気が付き驚いた。

ブリアティルトに来る前の世界で、彼が居候の為に密かに拵えた一対の護符。
銀をベースに、輝石で月と星をあしらったその護符の一方は
今回の品と同じく2つの異なる青の輝石を用いている。
それも、青の1つは青金石――すなわち瑠璃。
大分昔の話、もう持っていないだろうと思っていたのに
今もそれを身に着けていてくれていると知ったのは記憶に新しい。

…今回の依頼人は、彼と直接面識のある人物ではなかったが
今回の品が最終的に誰の物となるのかは、依頼内容等から何となく察している。
そもそも、依頼人も『贈り物』だと言っていた。

「二人して“星”だしなー…同じような“そら”を身につけるとはねぇ」

二人が揃った時の、幸せそうな顔を思い出して
ふふっと彼は嬉しそうに笑った。


――ただ幸運を招くだけではなく、高みに向かわせるために
試練をも招くと言われる、星を抱く深い青。
けれど、この二人なら―――きっと。

  • 2015/08/16
  • 創作モノ::幕間/AUC