滔々と流れる水は清く、そこに生じる風もまた冷たく清く、非常に心地良い。
はっきり言って最高・最上。
彼の得物たる装飾布もいつもより軽やかに風に身を躍らせ
透き通った刀身の剣もまた、木漏れ日を浴びて水面に負けぬ煌きを放つ。
―――やはり自然豊かなイズレーンの風土は、己に最も相性がいい。
わかっていたことではある、が、改めてそれを認識して、小さく苦笑一つ。
元々、オリジナルが永く過ごした場所がそんな土地…国だったのだ。
北方の山々から吹き降ろす冷たく澄んだ風。
それは冬に大地を豪雪で封じるが、春になれば雪融け水で大地を潤す。
水の都と呼ばれる美しい町並み、そこから少し離れて広がる広大な田畑と森。
生まれた土地はそこではない、と思う。
でも、地上に降りてからの永くをそこで過ごした。
それまでより多くをそこで経験し、学び、掛け替えのないものも沢山得た。
故に魂に故国と刻まれていたとしても何の不思議もない。
趣は違えど、同じ根本――豊かな水と自然と共にある姿に
懐かしさを感じてしまうのは致し方の無いところであろう。
欠片とはいえ、魂の一部を引き継いでいるのだから。
「…はっ。ま、、悪いことじゃねぇ、よな」
銀にけぶる細かい水滴を浴び、そう結論つける。
二度と戻ることの叶わぬ故国。
――かの地でしか会うことの叶わぬ人々が、幸せで居る事を願って目を閉じ
ひらり、清流に身を躍らせた。
+++++ END
