「うん、我ながらまあまあ良く出来た、かな?」
「…これ、こんなに布量があったら邪魔なんじゃ…」
「問題無い問題ない。それくらい有ったほうが何かの時には役立つし」
「怪我した時の応急手当に裂いたりとかな。まぁ違和感無く
魔方陣載せるのに面積がある程度必要ってのもあるんだけどさ」
二人係りで言われると、反論する隙が無い。
…一人でも充分迫力を持った人だとは思ったけど…
流石は、養い親の友人って事だけはある…ね。
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話がある、と、急に現れた養い親から聞かされたのは「イブラシル大陸に戻れ」という話。
正直…まず耳を疑った。
成長度合いを見たいからと強制的にあの世界から転送させて、
その上妹―――実際に血の繋がりはない。養い親を同じくする、私と同じ亜人の娘―――の
手伝いに行け、と更に他の世界に飛ばして、二人とも修行不足だからと
更に別の世界に送り込もうと送り先を色々見てまわっていた、そんな養い親なのだ。
いきなり元の世界に戻れと言われても、信じられないのが普通だと思う。
しかも、修行先として行け、というわけではないみたいなんだもの。
余計に信じられなかったのだ。
私の態度が余りにも疑っていたからだろう、母は手にした扇でぺしっと私の頭を叩き、
何故そんな嘘をつかねばならないのか、と、溜息をついた。
確かに母は嘘をつかない。冗談を言わないとは言わないけれども…。
「ごめんなさい。 …でも、何故急に?」
他の世界に送り込もうとしていた矢先の急な変更には、何か理由が有るはずだと思い、尋ねてみる。
案の定、やはり理由があったようで。私と入れ替わりにあの大陸を訪れた、
養い親の友人からの要請なのだという。確か、スーシャという名前だったはず。
―――ここで初めて、出会った彼女がオリジナルが別に存在する魔法人形である事、
二重人格者で其々の人格に其々の姿を有している事を知った。
そして…転移に私の血が必要だった理由も。
その彼女がまた私を必要として、イブラシル大陸へ戻して欲しいと母を説得したお陰で…私は再び、この地を踏む事が出来た。
必要とされた理由については本人に直接聞け、といわれ、転送してもらってから直ぐに落ち合った…のだけど…。
全く聞く隙がないどころか、始終彼女らのペースに振り回されている気がする。
先日もお茶をしていたと思えば、(私の)服を買いに走り、結局街着は買えても
旅装は中々ぴんと来なかったらしく…今のままでいい、と言っているのに折角だから作らせてくれ、と…
あの笑顔は凶器だわ。
笑顔が凶器になるなんて…初めて知ったかも。
殆ど森で育ち、前回の冒険でも余り多くの人と関わって来なかった私には、そういう処世術が少ない。
無いわけではないし、あの母の影響もあってそれなりの性格ではある、と思うけれど。
最初から打ち解けて、というのは中々難しいのだ。
慣れてしまえば気さくに話すことも、悪戯する事も出来るのに…
今回の旅では出来る限り他の冒険者とも交流を持ちたいと思ってはいるけれど、
最初の一人目にしてこの調子では先が思いやられる。
二人に隠れて、そっと溜息をつく。
…でもまあ、スーシャともヤシースとも、気は合いそう、だから。
後は私の気構え次第。
気を取り直し、彼女が仕立て(正確にはまだ仮仕立て)た、着せられている服の裾をつまむ。
布量が多い点は気になるとはいえ、デザインも私好み。
動作を阻害しないし、といってシンプルすぎるわけでもない。
―――だけど、これだけは譲らない。
「けど、このレースはこんなに要らないと思うんですよね?」
