前方に現れた魔物達。戦闘は避けられない。
未だ互いの間合いから少し離れているその間に、そっと胸元に手を沿え。
想いを込め、魔力を載せ、呟くは異国の言葉。
「Ich fordere Ihre Macht.(我は貴方の力を求める)
Ich stelle mir Ihre Figur vor.(私が思い描くは貴方の姿)」
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「よっ、元気にやってるようだな?」
突如掛けられた声に驚いて振り向くと、そこには黄緑の髪と薄緑へ至る白い翼を持った青年。
見覚えがあるようで無いような…ううん、見覚えはない。けどどっかで会ってる。
…誰だろう?
そう思ったのも刹那。
黄緑の髪の青年は一瞬淡い光を放つと、紅い髪の青年の姿へと変わった。
「なんだ…ヤシースだったの。誰かと思ったわ」
「はは、悪い悪い。こっちに戻ってきた直後だったんでね、戻るの忘れてたのさ」
あっちでは姿を変えてるんでね、と悪びれなく笑う見慣れた顔に少しほっとする。
共に旅する仲間が出来たとはいえ、やっぱりまだまだ御互い遠慮があるわけで…最初だもの。
それと、イブラシル大陸に渡って直ぐというのもあり、色々緊張してたから…ね。
「改めて。元気そうで何よりさね」
「そっちこそ。スーシャは元気?」
「ああ、いつも通り元気元気。何なら呼ぶさ?」
ヤシースの問いに首を横に振る。元気ならそれで良い、下手に出てこられると
私の方がその…困る。幾ら既知とはいえ流石に二人を相手にするのはちょっとね(苦笑
「ま、そっちも余りのんびりはしてられねぇしな。俺もこの後仕事があるからもう行かないとだし。
だもんで、今回はコレを渡しに来ただけさ」
私の心境を察したからか、僅かに苦笑しつつ。
彼が差し出したのは淡い色の透明な石がトップについた、シンプルなペンダント。
石は薄い緑…に、一部分だけ同じく薄い紫が入っている。
「これは?」
「蛍石」
「そういう意味じゃなくて…」
「冗談冗談。蛍石ってのはホントだけどさ。一人旅をするって聞いてたから、
使い魔位居た方がいいんじゃないかって話になってね。こいつを創ったって訳。
ま、一緒に旅する仲間が居るなら要らないかもだが…持っといて損はないだろ?」
ほら、と、促されて受け取ったそれからは、不思議な魔力を感じる。
創った、という位だから彼等が何か術を掛けたのだろう。
「それには未だ姿を持たせてない。俺らが決めるのも悪いかと思ったのさね。
必要になったら姿を思い浮かべて念じれば望んだ姿の使い魔が現れる…筈さ」
「筈、って」
「んー、大丈夫だと思うんだけどさ。姿を創る直前で止めるのは今回が初だから。
ま、駄目なら呼び出してくれ、調整するから。
っと、そうそう。そいつを初めて召喚する時にはこう言ってくれ……」
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「Sie haben einen schönen Flügel und eine Feder....(美しき翼と翅を持つ者…)
……創成と契約の証として、貴方に名を与えよう… ――“フロゥ”」
ヤシースから言われたとおりの言葉を紡ぐ。
蛍石―――フローライトから貰った名を。
かくて。
蛍石から生まれ、私の目の前に現れたのは……
