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幕間:巡りの狭間の騒動 II

side:ディド

続き

「スィンは冥界に属していたのか…」

ぼそりと零された言葉は思わず、といった感じで、誰かに向けて
発言したものには聞こえなかった。
だからそれに反応するのはどうかと一瞬躊躇ったけれど、主人とスィン嬢の会話に
――今はショックかスィン嬢が凍ってしまってるが――入るのは僕にもGie殿にも難しい、
そう判断して、ええ、と僕も小さく呟く。
僕が応じたのが意外だったのか、Gie殿は視線だけを此方に向けて僕を見た。

ちなみに、イディは我関せず、で、先ほどからずっと茶請けに出されたお菓子を頬張ってる。
確かにこの子が真面目に聞くには少し難しい話であるので、それはいいんだけれど。
理解できないから聞いていないのではなくて、理解しようとしないから聞いていないと
知っているのは僕位だろうか。
…と、それはさておき。

「知っていたのか」
「直接聞いたわけではありませんが。僕はスィン嬢の母上を存じ上げておりますので」
「そうか」
「はい」

短いやり取り。けれどGie殿はそれでわかったんだろう。
後は主人からスィン嬢への説明を聞いて、疑問があれば主人に問う筈だ。
…僕の中にあるのは僕が知っている範囲で物事を組み立てた推論だけ。
主人の話もなくコレを語るのは憚られる。
僕としても答え合わせがしたい。

それにしても、いやはや、うちの冥界関係率は本当に高いと改めて思う。
僕達の感覚が『普通』とずれているらしいのはそのせいかな…。
別に冥界に属しているからって死者だというわけじゃない、とは、主人と僕とイディの見解。
多分Gie殿もそうだろう。いや、あの方はそもそもそれを体現していた方だったか。
そういう界に属している、というだけなのだ、僕達からしてみたら。

スィン嬢の反応を見るに…やはりこれは異常な感覚なのだな、と、改めて思いつつ
長くなりそうな気配に、お茶の追加を淹れようと一旦席を立つことにした。

  • 2016/06/05
  • 創作モノ::幕間/AUC