机の上に並ぶ色も形も様々な瓶瓶瓶……
しかもまだあるのか、彼はどこからともなく次々と持ってくる。
1ダースなんて数分前にとっくに突破してしまった。
「ちょっと…幾らなんでも多すぎやしません?」
「そうか? そんなことねぇと思うけど」
至極真面目な顔でさらりと返してくる、黄緑の髪の青年。
―――スーシャとヤシースが別世界…彼らにとっては元の世界…で
支障なく過ごすため、ヤシース側の人格をベースにし
一人になった姿だという。見た目は全然彼らと異なる。
緑味の強い黄緑の髪。
白い翼は羽先に向かって薄緑色。
きつい目つきの目は深い琥珀と深緑。
そして何より、背が高い。
私より20センチ近く高い気がする。
私のサポートのため、度々此方の世界に来るときには元の二人に…
もしくはどちらかになっていることが多かったのだけれども。
先日、こっちに拠点を戻すと告げた時からこの姿のままだ。
彼曰く「今はこの姿が一番消耗しない」とかなんとか。
スーシャをベースにした姿もあるらしいが、私は見たことが無い。
「どんなのが好みなのかわかんなかったから、色々揃えてみた。
ああ、俺がこっちで消費する分もあっけどね?」
「…僕はダスクさんの意見に同意しますよ。
幾らあちらでお金を使わなくなる、結構溜めてたからって
散財しすぎでしょう、主人(マスター)」
私の前、机の僅かなスペースにどうぞ、とカップが差し出される。
紅茶にしては甘い香りがふわりと漂った。
「ああ…ごめんねディド君。ありがとう」
横に立つ少年に声をかける。
彼は青年――今は翼人(ヨクト)と名乗っている――の遣い魔。
スーシャとヤシースが遣い魔としていた、巨躯の白狼なのだという。
大きくなりすぎた『力』を抑止する一環として、彼に人の姿を与え
自らの『力』の1/3近くを委譲しているとか。
ディド君の他にもう一人、可愛らしい遣い魔が居るのも知っている。
が、今日は時間も時間なので寝ているとのこと。
「いいえ。お客様をおもてなしするのは当然です。
―――全く、お茶も淹れないなんて」
「茶より酒かなって思ってたからね。
ダスクだってただ渡すだけじゃ不安だろ?」
ディド君の窘めるような視線をものともせず、ヨクトは笑う。
そう。
ここに並ぶ瓶は全て酒。しかもこの世界の酒ではない。
殆どが彼らの居た世界で造られたもの――話によれば更にそこから
“飛んだ”世界にあるBarから譲って貰ったものもあるという。
先日、とある友人と話をしていて、それが切欠で
見繕ってもらえないかとヨクトに連絡したのだけれど…
…こんなに沢山の種類と量を持ってくるとは思わなかった。
「まあ…そうですね。流石に味見もせずにただ渡すのは…
…でもヨクトは飲んだことあるのばかりでは…?」
「でもねぇんだなこれが。
―――酒を飲むとやばい事になる居候が居てね…、
そいつのせいで料理酒ぐらいしか置いてなかった」
やばい事を思い出したのか、はぁ、とため息を付く。
ディド君まで神妙な顔をしてため息を付いたところを見ると
よほど酒癖の悪い居候さんだったらしい。
「ま、そんなことはさておいてだな。
ダスクが気になったのから遠慮なく開けてくれ」
ストックは充分確保してるから、と、笑う彼の前に。
あぁ、明日は二日酔い確定だと腹を括ったのだった。
