地上からはとても視認できない高度に、3つの人影が生じた。
1つは青年、1つは少年、もう1つは性別のわからぬ小柄な体。
青年の耳は魔族的に尖り、その背には大きな白の―――白から薄緑へ変化する翼がある。
少年ともう一人…幼子は獣の柔らかな耳。少年の方は白銀、幼子の方は金を弾く赤銅。
二人とも耳と同色の尾を有している。
「それで、主人(マスター)。どちらに向かわれるのです?」
少年に主人と呼ばれた青年は眼下の大陸を見下ろしたまま数拍置いて、そうだな、と口を開いた。
「…北に向かうか。どうせなら一番北の国に」
「北…ですか」
「えー、さむいよぉーあったかいところがいいー」
青年の返答に少年は意外そうな顔をし、幼子は不満の声をあげる。
不満の声に青年は漸く視線を大陸から外し、幼子の方を向いた。
「寒いからいいんじゃないか。あっちは温暖気候だから違う方が。
それに、北の海鮮物は美味い。お前も魚介類は好きだろ?」
「ぎょかいるい、って?」
「魚とかのことだよ」
「さかな!うん、すき!! 北に行く!!」
「単純な奴…」
幼子の反応に少年は呆れ、青年は楽しそうに笑う。
「そうと決まればさっさと行くか。二人とも中に戻ってろ」
「はぁい♪」
至極上機嫌な幼子の姿がふっと消え、場に少年と青年だけが残る。
今度は青年の方が意外そうな顔をして、少年を見やった。
「どうしたディド。お前は北行きに反対か?」
「いえ、そういうわけでは。ただ…その……、本当に北で良いのですか…?」
誰が聞くでもないというのに、ディドと呼ばれた少年は声を潜めて青年に問うた。
彼は知っていた。青年が―――青年の基となる人物達が抱いていた感情を。
だから北に行くことは無いと思っていた。それなのに敢えて北を選択した理由が判らない。
少年の視線から想いを読み取ったのだろう、かすかに苦笑して、青年は彼の
頭にぽんっと掌を乗せて言う。
「そうか…心配をかけたようで悪かったな。何、俺でいられるうちは大丈夫だろ。
無理だったら壊れる前に出て行くだけの話さ。アイツのような馬鹿はしない。
まあ、無理をしていると思ったら遠慮無く言ってくれ。多分、お前が一番わかるしな」
「……わかりました。僕としても、主人に壊れられては困りますから。
そんな傾向を見つけたなら遠慮無く言わせて貰います」
「おう。
そういえば、言葉遣いも遠慮なくて良いんだぞ? イディアみたいに呼び捨てで」
「それは出来ません!
互いにどんなに姿が変わろうと、貴方はずっと僕の『主人』ですから」
礼を尽くすのは当然の事、あの子が遠慮無さ過ぎるだけだと少年は頬を高潮させて訴える。
その姿に青年は再び笑い、少年をあやすようにぽんぽんと頭の上で軽く手を弾ませた。
こうして彼等は、ネバーランド大陸は最北の地に降り立った。
