白い装束の青年―――ナセルが翼人に保護されて数日。
使い魔が負わせてしまった負傷は、カーシャ病院に(ごろごろと転がって)行ったお陰で
綺麗に完治したナセルが、何処へ出かけて戻ってきたのは丁度お菓子時。
訪ね先で大量の彩り鮮やかなお菓子をホクホク顔で貰って来た彼は
台所と食器棚を勝手に拝借して、元々持っていたらしい茶葉で茶を淹れ
持ち帰ったケーキを始めとするお菓子類を見目良く皿に盛り付けていく。
「お茶を入れたぞ」
「ん? ああ、サンキュ」
勝手に拝借された事に気付いていないのか、それとも気にしないのか。
恐らく後者であろう翼人は、ナセルの行為を好意として素直に受け取り
寛いでいたソファから台所へ向かって ―――硬直した。
「…お前どんだけ甘党?」
茶そのものの味を楽しむために翼人は基本的にストレートを好む。
まぁ、モノによっては砂糖を入れることも勿論有るが…
ところがナセルは全く躊躇いもせず自分のカップに3杯放り込んだ。結構山盛りで。
翼人はまずそれに驚いて動きを止めた。
が、直後に別の理由によって完全に硬直する。
―――彼を硬直させたのは、ナセルが持ち帰ってきた菓子類。
「ホアユエンのところにいって謝ってきた。
それで、帰りにたくさんお菓子をもらったんだ」
お菓子の量に驚いたのだろうと思ったナセルは自慢げに説明を続ける。
「家を壊したのに、これだけ施してくれるなんていい奴だな!」
ありえない位鮮やかな青色も混ざったこれらの菓子。
その色が意味するところを翼人は瞬時に悟った。
これらのお菓子を花エルフが渡した理由は唯一つ。
そうでなければ甘い物が好きなあの花エルフが、お菓子を譲るわけが無い。
そもそも自分の部屋を破壊して行った相手に、謝罪したとはいえ
それで全てを過去を流すような奴でもない。
同時に、ナセルはまだ一口も食べていない、と言う事も理解する。
もしかするとナセルの味覚はぶっ飛んでいるのかもしれないが。
「…ユエ手製の菓子は俺ら一切食わないぞ」
それは全部ナセルが食べろよ?
食べて問題の無い躯ではあるが、だからといって敢えて食べる気は無い翼人は
恐ろしく温度が低く、かつ良く通る声でにこやかに宣言した。
