※注
第3期に向けてのRPなSSモドキ。
想像・妄想大暴走だし2期で知り合いになった方々にもわからん記事かと。
ご覧になる場合はご注意を。こっちは今期キャラの視点より。
凄い長いです!
「…で、ここはこうなって…ああ、そっかそっか…」
びっしりと文字と術式で埋まった大きな羊皮紙を食い入るようにして読んでいく。
いや、実際、その視線で羊皮紙に穴をあけかねない勢いで、
彼は親友の手でしたためられたそれを熱心に読みふけっていた。
『ねえ…これ、本当にわかるの…?』
「ぁ? ああ、判る判る。判るかららちーっと、黙っててくれねぇさ?」
時間が無いから集中したいのさね、と、彼は頭の中で響いた女の声にそう応えた。
時間がないというのは、あくまで口実。
難解な術式、しかも自身の知らない知識ともなれば、持ち前の知識欲が疼いて楽しくて楽しくて仕方ないのだ。
それを邪魔されたくないから、敢えて女にはそう言った。
女の方も、そもそも自分が彼に依頼した事なのだから、その彼に時間が無いと言われれば黙るしかない。
彼の手元にあるのは羊皮紙だけではない。魔法書も数冊、広げられている。
これらは全て、親友が送ってくれたものだった。
先だって、女の方からどうしても「異界に魂を載せた人形を送り込みたい」とねだられ、
それを実現するために親友――今はもう直接会うことは出来ないかけがえの無い友――に、
反則行為だと判っていながらも、彼は手紙を送っていた。
桁違いの魔力を秘めたその友人は、かつて魔術で生命体を創った事がある。
ならば、人工生命の生成に関する知識、あるいは魔術書を持っているだろうと見込んで、
良かったら教えて欲しい、OKなら同封した赤い栞を該当の書物とかに挟んでくれれば、という内容の手紙で。
同封した栞には、栞が文書に挟みこまれた場合、その内容を垣間見えるような魔法をかけておいた。
もし拒否されて破棄あるいは燃やされた場合には、その魔力が途絶えてわかるようにして。
余りにも身勝手なお願いだと彼自身思っていたので、応答が無くても仕方が無いと思っていたのに、
友人は丁寧に人工生命についての記述をまとめ、自身の解釈を添えた書類と、
その参考書を栞に貯まっていた魔力を通じて、送ってきてくれたのだった。
(…悪いことしちまったなぁ…)
羊皮紙の筆跡を愛しげに追い、懐かしい姿を思い浮かべる。
今でも、友人の姿は瞼の裏に鮮明に焼きついていた。
器が無事完成したら、ちょっとだけ会いに行こうか。
そんなことをぼんやりと考えていた自分に気が付き、彼は横に首を振った。
自分たちはあの世界では過去の者、自らの意思で想ってくれる親友を――多くの友を置いて、
思い出の中にしか生きられない存在になったのだ。
その自分たちが再びあの世界に戻ることは許されない。
許してはいけない。
今回の手紙の件ですら、本当は反則行為なのだから。
しかし…世界は違えど、本当の身体ではないとしても”現世”に存在することが出来たなら、
そこから何かを送ることは、ぎりぎり許される…気がする。
許す・許さないも自己満足だとは判っているが、冥府からというよりずっとましだ。
上手くいってもいかなくてもこの件に関して礼はしたい。
なら、お陰で成功した、と行き先の世界から便りを出すのが一番な気がする。
よし、と心の中で一つ頷き。彼は再び羊皮紙と魔法書に没頭するのだった。
・
・
・
「…ん、どうやら来てくれたみたい」
『オッケ。んじゃ、始めてくれ』
複雑に入り組み構成された広大な魔方陣の中心に立ち、彼女は意識を集中させる。
彼が読み解き理解し、改変を加えた”人形”創りのための魔方陣はある種の整合性をもった
文様にも見える程に細かく、魔力をインクのように変化させた物質で辺り一面に書き込まれていた。
本来は術者の血を用いるのだが、今回は自身の魂の一部を載せることと、異世界で活動するために
必要な最期の要素を考慮した結果、敢えて魔力で引いたものだ。
これを圧縮し、自身の身体を通して魂の一部を載せ、”人形”が活動する世界へ飛ばす。
飛ばされた先では未だ魔方陣のままだが、最期の要素が加わった時点で
自動的に魂の一部が載った”人形”が生成される。
転送に関しては何故か本人格の方が適性が高いため、彼は圧縮までを魔方陣に組み込んだところで彼女と交代していた。
…失敗の出来ない一発勝負の生成法。だが、彼には自信があった。親友が羊皮紙に色々と書いてくれたお陰だ。
徐々に魔方陣が収縮し、彼女の足元から身体へと吸収されていく。
術が魂を撫ぜる――背筋に蟲が走るようなおぞましい感覚を堪え、その全てを飲み込み。
「…いくよ…っ!」
小鳥を空へ放つような仕草で、彼女は自身の内に飲み込んだ魔法陣を異世界へと転送した。
・
・
・
周囲を白く塗り潰す閃光と共に、彼らはそこに降り立った。
深い深い森。久しぶりの木々の匂いに、肺一杯に空気を取り込み、深く息をつく。
『…動作も中身も、外見も全て異常なし。成功どころか、大成功さね!』
思っていた以上のコンディションさ、と、彼は嬉しそうに叫んだ。
それはよかった、と彼女は声を出さずに答え、へたり込む女に近づき、声をかける。
羽耳の、紫の髪の――少女という域を少し前に抜け出したという風体の彼女こそ、
彼らが…彼らの魂(の一部)を載せた”人形”がこの世界に誕生するための最期の鍵であり、最期の要素。
古い知人の養い子――確か、ダスクという名だったはず。
「…ちょっと、ね、大丈夫?」
肩を揺すると、はっとしたように身じろぎする彼女を見て、ほっと安堵の息を漏らす。
この子に何かあっては、友人にあわせる顔が無くなるところだった。
「すみません、大丈夫です。 …余りに眩しかったもので」
「無理も無いわ、この暗さからあの閃光を直に見ちゃったら。
御免ね、あんなになる予定じゃなかったんだけど」
『無理言うな本人格。生成で発生する光をどうやって抑えろってんだよ!』
(…ここは謝っておくところでしょ。
閃光が出ることを言ってなかったのはこっちの落ち度だし)
それはそうだがと頭の中でごねる彼を無視し、立てる?と、手を差し伸べると、
彼女は素直にそれにつかまって立ち上がった。
未だ少し眩暈が残っているようだが、そんなに支障は無いようだ。
「…天使?」
どうも、と目礼をしたときに、白い翼が目に付いたのだろう。
”人形”とはいえオリジナルの姿を模して作られているためか、この暗い森の中でも
――いや、暗い森の中だからこそ、よく目立つそれを観ての呟きに、思わず微笑む。
「本当の身体の方は、そういわれていた事もあったかな」
種族的にはきっと”人形”の今も変わらない。
しかし、自ら冥府へと堕りた自分はもう天使と呼ばれるに相応しくは無い。
その証拠に、エンジェルハイロウ(天使の輪)は、生成されなかった。
それは、と尚も問いかけようとするダスクを制し、それよりも、と言葉を続ける。
「協力してくれて有難うね。お陰で最高のコンディションの身体が出来たって言ってる。
さ、貴女のお母さんが待ってるから。消えないうちに早く」
この身体じゃ余り長く通路を開いていられないからと、両肩を押して促す。
この世界では魔力の大半を”人形”の体を維持するのに使うことになるため、
その他に回せる魔力はあまり無い。だから魔方陣の効力もずっと短い期間でしか保てないのだ。
思った以上に華奢なのか、それともこの身体がずっと強い膂力を持っているのか。
ダスクは押されるまま、光の薄まった魔方陣に片足を突っ込む。
「あ、あの…!」
半身が魔方陣の中に入ったところで、振り返りながら彼女が叫ぶ。
「せめて、貴女の名前だけでも教えて下さい…!」
一瞬、何を問われているのかと呆けたが、直ぐににこっと笑って
「…スーシャ」
そう応えた刹那、転送魔法が発動した。
・
・
・
『…さて、これからどうするのさ?』
「この世界には、冒険者として登録する制度があるみたい。
えーっと、なんて言ったっけな…そう、ディアスって街に行かないといけないみたいね」
『行き方とかわかるのk…って、そうだ、このためにこの世界に居る奴の”血”を使ったんだもんな』
”人形”創りの最期の要素。
異世界を旅するのなら、その世界に既に馴染んでいる者の一部を取り込んだほうがいい、
ということで、知人を経由してその養い子に協力してもらったのだ。
一般的には髪などでも問題なかったが、異世界での耐久性も兼ね備えた”人形”にする必要があったため、
自身の血ではなく、彼女の血で創ったのだ。
お陰で読み書き、言葉にも、基礎知識には不自由する懸念が無い。
必要としない限り出てこないのが難点だが、無いよりはずっとましだ。
「そゆこと。
ね、町に行く前にせめて得物くらい用意しておいた方がいいと思うんだけど」
それくらい創る余裕はあるよね、と問う彼女に対し、彼は眉をひそめた後、
『特殊なもんじゃなきゃ。極普通の武器なら、大丈夫さね。 ――何を創る?』
「この身体、かなり膂力があるみたいだし。折角だから、大剣がいいな」
刀身は赤か黒でお願いね、という彼女に、彼は笑い声で応えた。
