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幕間:行き先

「ディド」
「はい?」

あまり聞き慣れない声音の主の呼び声に、彼は違和感を覚えながら
いつものように返事をした。

続き
呼びかけた当人は束の間逡巡した後、

「……悪ぃけど、後の事は頼むわ。
 ちーっとヤバイんであっち行って来る」

主の言う『あっち』がどこの事を指しているか、勿論彼は知っている。
いつもならそんな事も言わず勝手に行く、というのも。
勝手に行かれようとも、使い魔たる彼等には何の支障もない。
主が呼べば…呼ばずとも危険を察知すれば、例え界が異なっても
即、主の側に現れることが出来るのだから。
故に行き先を問う事は今まで一度も無かった。

だが、今回は。

「…どちらへ」
「とりあえず館。アイツが居ればいいし、いなきゃ…その時考える」
「他に選択肢は」
「無い。

 …まだマシだろ? 此れで済むんだから」

ある意味俺でよかったよ、と、主は自嘲気味に付け加える。
その真意を読み取って、彼は小さく溜息をついた。

「わかりました、とは、言い難いですが…わかりました。
 …出来る限り…壊さないようにお願いします」

何を、とは言わなかった。
そして、これを言っても無駄である、という事も彼はわかっていた。
主が彼等に行き先を告げる意味を…理解してしまったから。

  • 2011/12/21
  • 創作モノ::幕間/KOC