背の翼をしまいこんで、仰向けに寝転ぶと土と草の匂いが鼻腔をくすぐった。
そのまま視線を真っ直ぐ向けると、そこにはビロードのように滑らかな
深い深い紺碧の空と、宝石のように煌く幾億もの星々。
凍て付くようで、清冽で。それで居て温かな光。
『………この世界の夜空も、綺麗さね』
「そうだね…」
大地に寝転んで夜空を眺めるなんて、何時振りだろう。
…もしかしたら、初めてかもしれない。
懐かしい気分はするけれど、わざわざ翼を仕舞ってまで大地に寝転んで、
というのは記憶に無いから。
『たまには夜の大草原に寝転がって、夜空を見上げてごらん』
『殺伐とした世の中、荒涼とした大地に血の匂いが充満してても、
夜空の美しさは変わらへんさかいな』
…絶対に変わらないものなんて、何処の世界にもないと思う。
けれど、不変に近いものなら元の世界にも、この世界にもある。
手を伸ばせば届きそうなほど近くに。
言われるまで気にもしていなかったなんて…勿体無いね…。
明日には、この丘を離れる。向かう先は新大陸の森だと言う。
また暫くはこうして空を見上げることなんて、できないだろうから。
眠気が意識を喰らうまで、ずっとずっと、眺めていよう。
