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幕間:気付き。

聖者の丘に滞在して、もうかなり経つ。
力量としては充分先に進めるんだけど、新大陸に渡るためにはもっと戦力強化を
図る必要がある―――要するに、先立つものが必要になるわけで。
そういう意味で、何時ぞやのようにPTをわけ、先行組と後発組に別れている。
私は後発組だ。冒険者登録の順番のせいで、そうならざるを得なかった。

ま、不服は無いよ。
ちょっと…見飽きてきたけれどね、この風景は。
暫くすれば先に進めるんだし、何より連絡をやり取りする方が増えて―――
なんていうか、色々やり取りしていた昔を思い出して、これはこれで凄く楽しいし(笑

続き
そんな日々を過ごしている、つい先日のこと。

「ふむ・・・それよりも心が2つあっても身体が1つしか無い訳やから、
 2人同時に恋に落ちると喧嘩になるんとちゃう?
クリスマスとか年越しとか大事なイベントは、一緒に過ごしたいやろうし」

…ディーノさんに言われて、あ、っと思った。
ていうか…言われるまで、全然気が付かなかった。

二重人格だから、そうなってもおかしくなかったんだ…と。
椰子自身が一歩引いてくれてたからそうならなかっただけで。
彼がもっと独自に行動していたら、私達はもっと違っていたはず。
椰子が表に出ている時の記憶は、共有できない部分があるし。
私を立ててくれたから、そんな事態にもならず――まぁ、義母上に対しては
嫁と愛人って間柄だったか――周囲の人たちと仲良く過ごすことが出来てたんだ…
と、本当、今更ながらな話だけど…。

……ずっと、無理強いさせてきた、のかな。


『…何を阿呆なコト考えてるのさね、本人格』

怒った声が、急に脳裏に響く。

「…聞こえてたの?」
『聞こえなくてもお前の感情の揺れなら直ぐに分かるさ。
 俺を何だと思ってんのさね?

 ――お前を護る為に生まれた存在なんだぜ、俺は。
 そんな俺が、お前を立てるのは当たり前だろ』

くだらねぇコトを考えるんじゃねぇよ、と、本気の怒りが込められた声。

「…そうだけど」
『だけど、じゃねぇ。
 ったく…まあ…、お前が”気が付いた”時から、ずっと一緒だからな。
 俺って存在に違和感を感じることは無いのかもしれない。
 けどな、本来俺はお前を護る必要が無くなったら、消えて当たり前なのさ。
 俺の存在意義はお前を護ることだ、本人格。お前の幸せを押しのけてまで
 自分の感情を優先することはねぇよ。ていうか考えたことも無い。
 ――あの二人に心を許したのは、俺でもお前でも受け入れてくれる二人だからさね』

だから下らないコト考えんのは辞めにしろ、と怒られて。

「……敵わないなぁ、全く。わかった、辞めるから。
 でも、その代わり、一つ約束してくれない?

 ――絶対、勝手に消えないって。
 居るのが当たり前、二人で一人、それが私達だから、さ」

それで困ることがあったとしても、今まで乗り切ってきたんだから。
そう…、今まで、ずっとそういう風にやってきたんだから。
こんなことを考えるのは、椰子に怒られて当然だった、ね(苦笑

ふっ、っと自嘲交じりの溜息をついて。
見上げた空は、昼と夜が見事に交じり合った綺麗な夕焼け空だった。

  • 2009/09/06
  • 創作モノ::幕間/DK