『覚えられたさ?』
相変わらず教本を食い入るように読みふけっている本人格に問い掛ける。
結局…前回は躯を変化させずに入れ替わって、俺が2回召喚した。
詠唱・構成・発動まで俺が一人でやったのって…そういや初だったな。
本人格が中でそれを見てるだけってのは今まで無かったさね。
「なんとなくだけどね。魔力構成の仕方は理解した…詠唱はまぁ言葉遊びだし…
発動は構成と言葉遊びを合致させるものって感じか。目的のを引っ張り出す
ところにちょっと不安はあるけど、そこはルーンで予め縛ってるし…」
相変わらず、体験しての習得は理解が早くて助かる。
教本を睨みながらほぼ理解したと告げる本人格に俺は心から安堵した。
予定外に俺が覚醒してる時間が長いせいだろう、思っている以上に
消耗が激しいことについ先日気が付いたんだよな…(汗
幽体離脱(本人格命名)はこの躯だからさほど問題なかったはずなのに、覚醒時間が
長すぎたのは悪影響だったのと、それに加えてのルーンによる召喚魔法行使。
こちらの魔法使用を考慮しない設計をしてたせいで負荷が大きかった。
回復魔法は元々適正があるし、躯の修復に使ってたベクトルを外に向けて
ちと調整するだけだったからそれほど問題にもならなかったが…
「…椰子? どうしたの?」
『いや。お前にしちゃ飲み込み早ぇな、と思ってさ』
「失礼ね! 私だってそんなに馬鹿じゃないんだから」
全くもう、と怒るその素振りは勉強で疲れている位で、いつもと大差ない。
気分屋でお気楽で大雑把で、そのくせ妙に心配性で脆い一面を持ち合わせた
――もう一人の俺であり…そして…
『怒るなって、こう見えても誉めてるんだからさ。
さて。ルーンも使えるようになったし、内部調整も大体終わったんで
俺は暫く寝るさね。何だかんだとずっと起きてたからなぁ…』
「え? えーっ、次回私一人で召喚しろって?本気??」
『だって理解したんだろ? だったらもう俺のサポートなしでも大丈夫だろ
身体能力向上調整も本人格だけでもう出来るしさ。
てか、ずっと調整続きで疲れたのさね…居眠り程度じゃ足りねぇ』
今俺が引っ込んでおけば本人格…というか表立った影響が出ずに済むだろう。
それに、表にずっと本人格が出ているから、外の世界との相性は奴の方がいい。
ルーン魔術の負荷だって、いずれ躯の方が慣れる。慣れれば負荷は減る。
…それまでは心配でも悪影響は封じなきゃな。
このみょうちくりんを護ること、それが俺のレゾンデートル――
人形の躯であろうとなかろうとこの魂で居る限り不変であることだから。
「そっか、そうだよね…うん、わかった。ゆっくり休んで。何とかするよ」
『おう。ま、今度起きたら代わってくれや。俺も躯動かしたいからな』
了解、でも私にも幽体離脱教えてよ?、と笑う本人格を見て。
つくづく俺は保護者気質だなと、自分で自分に呆れるのだった。
