燦然と煌く白銀のそれは、俄かに曇り翳る空と相俟って、天の川のようでもある。
もちろん、天の川ではない。
空の星々がこんなにグネグネ動き回ってたらたまらねぇ。
それは世界によっては“聖なるもの”とされる一つ
―――長大な龍の姿。
「…なるほどな…、本人格が『血と心が騒ぐ』って言ったの、
理解できるさね。これは…疼くさ…」
初めてこの世界の龍を目の当たりにした俺の口から出たのは、率直な感想。
が、流石に赤龍に続いて2度目ともなれば、皆はそこまで驚きはしない。
むしろ、龍の持つ魅力やプレッシャーに『こうでなくちゃ』、という方が強い気が…
「て…敵ですねっ」
おっと。
相変わらずファルーは緊張しているよう、か。それもそうだよな、あんな巨躯の持ち主。
普通の女の子があんなものと対峙して、緊張しないのがおかしい。
…こんなところまで冒険に来るファルーが本当に普通の女の子かどうかの真偽は、この際横に置いておく。
「さて、今回の龍はどーなるかねー。まぁ俺の役割は変わらないどころか
むしろ天使羽しなくなった分減ってるのだが」
ファルーに対しのんびりとした口調なのはイニャス。
彼はいつもの短剣を仕舞い、代わりに扱う飛び道具――ニードルガンの最終確認をしながらぶつぶつ呟いている。
それが魔法を使えない愚痴っぽく聞こえるのは気のせいということにしておこう。
「二体目だろうがなんだろうが、しっかり気を引き締めていかねえとな。」
リュエリアは相変わらずのポーカーフェイス。赤龍のときと同じく、油断なく構える。
流麗な姿からは想像出来ないほど、強烈な威力を持つ弓を。
…だよな。赤龍には苦戦しなかったとはいえ、今回のもそう上手くいくとは限らない。
油断は禁物… …と、思った矢先。
「便利屋「DancingMarionettes」所属、ラルフ・リィステイル…LOVE MAXで決めるぜーっ!」
ラルフの元気な挨拶に思わずずっこけそうになる。いや、膝カックンくらいは入った!
挨拶するのは礼儀正しくていいと思うんだけどさ、龍ってそれ理解できんのか…
つかこの場でLOVE MAXとか言うか?普通。
そこまで思ってからラルフなら言うか、と思い直し苦笑する。
「っと。おい、本人格。時間だぜ、起きろ」
何か静かだな、と思ったら本人格が寝たままだった。
起こさなくても戦闘に支障はない、が、戦闘後に非常に支障が出るので呼びかける。
『――…んー? ふぁあ…もうそんな時間?』
「あぁ(笑
さぁて、楽しもうぜ? 滅多にこんな時を体験できるもんじゃねぇんだから、さ…!」
右手に巻いた“EinFaden -Aeolus-”に注ぐ魔力を高めると、場の空気が揺らぐ。
“EinFaden -Aeolus-”の魔力に反応した大気が、俺の支配領域を広げる。
想像力がなければ『単なる風を操るモノ』でしかないが、想えばどんな形の得物をも現す。
前に使ったときにも思ったが、本当に便利な武器だ。
隣に並ぶラルフも巨大な剣――“ガウェイン”と銘打たれた無骨な剣――を構えた。
あの体躯からこの剣を悠々と扱うなんて、非常識もいいところさね。
この後、もっと信じられない光景を目にすることになるとは露も思わず
宙の白龍に視線を戻す。
背後から銃の装填音、抜刀音、そして、重々しい盾を構える音が響き。
「それでは、いきましょうか」
前衛へ歩を進めてきたクロムの言葉を合図に
イニャスのニードルガンが何よりも疾く咆哮を上げた。
