黒眼の塔最上階。
何度見ても美しいその巨躯の色は、煌く闇色―――そうだな、宝石に例えるなら…
黒真珠とオニキスってところか。
緑から紫の艶を持つ感じは黒真珠のそれ。
ただ、鱗の硬質な感じはオニキスのそれ。
両方の色と質感をあわせると丁度あんな感じになると思う。
赤龍と白龍とはまた違った美しい鱗をもつ龍が4体、空から俺等を威嚇していた。
そう…黒龍は前の2体と違って、そっくりな…大きさだけが違うのを3体伴っていた。
黒龍だけが仔龍を伴うのだと、ラルフにそっくりな少年が言う。
彼は黒龍についてなぜか詳しい。言動を見ていると、どうやら黒龍と因縁があるようだが。
『へぇ…、黒龍は雌なのかしら?』
(…そもそも龍に雌雄ってあるのさ?)
思念だけで本人格と会話を交わしながらも、俺の心境は結構複雑だった。
魔物…龍を魔物とするかは微妙だけど…とはいえ、子供に手を掛けるのは躊躇われる。
といって、倒さなければ目的は達成されない。
戦闘不能に陥らせるだけで済むならいいのだけどな…
「命の奪い合いはしたくねぇけどなぁ、そうも言ってられないか… 」
溜息混じりに呟くと、相変わらず優しすぎる、と苦笑交じりに突っ込まれる。
こういうときは本人格の方が冷静だ。やらなきゃいけないことはやる。
事戦闘に関しては――試合の時はまだしも――女子供関係ない。
そういうところが天使らしくないと言われてたのを思い出す。
『椰子らしい悩みだけどね。大丈夫だよ、肉を喰らいて
その命を自分の命に繋ぐってやってるし。気にしすぎない!』
「…お前の龍肉料理はそんな純な動機じゃねぇだろ」
若干ずれたフォローだったけど、それで大分気楽になった。
全く…護るはずの対象に精神的にフォローして貰うことになるとは、俺もまだまだだな。
二度目の溜息は深く息を吸い込むことで深呼吸に変え、右腕に巻いた
Aeolusの魔力を最大限開放する。
こいつと戦うのはコレが最後。Aeolusに用いた『風の魔力で紡いだ糸』を解いて紡ぎ直し
『水の魔力で紡いだ糸』と、新たなカタチとなることが決まっているから。
また新たなカタチで逢うと判っていても、いつもより思いっきりやらないと失礼だよな。
開放された魔力がいつもより強力に大気を歪め、支配領域を広げ。
「ま…、気ぃ引き締めていくさ…!」
・
・
・
この戦闘後、いつも通り龍の尻尾肉と鱗をGETしたのは言うまでもないが
予想もしていなかったブツをイニャスがGETしていて、
スゴイ形で俺等に渡されることになる事を、この時は未だ知らなかった…
