―――今にも放たれそうな蒼く煌く矢。
上空にその長躯を留め、燭のような瞳で獲物に狙いを定める青龍の姿を見、
私は戦闘中にも関わらず、そんなことを思った。
『戦闘中にぼさっとしてんじゃねぇさ本人格!』
怒鳴り声が脳裏に響き、はっと我に返る。
横を見ると怒った顔の椰子の姿。
幽体姿では物理的な攻撃は出来ない、けれど武器に魔力を送り込み、
制御することは出来る…そう言って、椰子は幽体状態のまま戦闘に参加していた。
今回扱うことになった特殊能力を持つ得物―――幸いにも青龍の特殊攻撃で
剥がされることがなかった2つのソレのうち、彼はTethysを制御し
氷と水、風を用いて援護、或いは直接攻撃を行っている。
私が扱っているのはもう1つの新たな武器、Astraiosの方。
(ごめん!)
心の中で謝り、再度青龍に向き直る。
青龍は相変わらずの姿勢のまま。
でも、こちらに向ける“気”だけはどんどん増えている。
「来るぞ…」
背後で誰かが呟く。何が、とは誰も問わない。
皆、何が来るのかは判っていた。本気を出した龍が剥き出す、怒りの歯牙。
その威力は先日黄龍に挑んだ『めるぎと』の話を聞けばわかる。
ムアサドーの闇を持ってその視界を奪ってても、嗅覚は生きているから
私たち標的がどこにいるのかなどお見通しだろう。
だからって怖気付いて身を縮めている場合じゃない…!
タイミングを計っていたラルフが見えない足場を作り、青龍の位置まで駆け上がる。
その後を追って、私と椰子も翼で空を疾る。
先に青龍の元へ到達したラルフが強烈な一撃を喰らわせて、青龍の左手をへし折るのが見えた。
ちなみに、右手はイニャスの二挺拳銃による早撃ちで早々に折れている。
『ガウェイン床に刺さったまま素手だってのに、なんつー攻撃力さね…』
(しかも病気治ってないのにね。ま、本気出したら変態クラスだし、妥当かも?)
本人に聞かれたら凹まれるか怒られるかするような軽口を叩き合いながら
後退するラルフと入れ替わりに、その長躯へ氷の刃と反磁場の裏拳を叩き込む。
ばら撒かれたウィルスが抜けきってないため、そんなに威力はないが
それでも確実に青龍の体力を奪っている感触は有った。
続けて、召喚したムアサドーの魔法が炸裂するが、こちらは鱗に阻まれて
大したダメージにはなってない。
ゆらり。
力を溜めていた青龍の長躯が揺らぐ。
(………来る…ッ!)
人形の躯とはいえ、バリアの役目を果たす天緑糸のピアス…その模造品
Himmelをはずされている今、この至近距離であの牙を喰らってはかなりやばい。
急いで離れようとした、その刹那。
ファルーの放った攻撃が、青龍に当たった。
見えていない眼で、青龍が攻撃の飛んできた方向を睨む。
「! ファルー、避けて!!」
そう叫ぶが早いか。
轟と風を巻き起こし、青龍が塔にいるメンバーへ突っ込んでいく。
その牙は明らかに、今しがた攻撃を加えた小さな体を狙っていた。
