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幕間:始まりの裏側2

良く見なければそうだとわからない…いや、知らなければ確実に見落としてしまう、
そんな木々にカムフラージュされたゲートをくぐれば、ぐらりと世界が揺らぐ。

前後左右上下がわからなくなる浮遊感と、それに伴う一瞬の気持ち悪さ。

何度経験しても慣れない感覚を我慢すると、直ぐに心地よい森の香りに包まれた。

続き
ここはヨクトが空間の狭間に創った場所。
創ったとは思えないほど、リアリティが高いこの空間は小さな森の姿をしている。
ゲートをくぐる前の光景からはかなり異なっているから、初めて此処を訪れた時は驚いた。
彼らが長年過ごした場所を再現しているとかで、アストローナ大陸や
イブラシル大陸で見られるような森とは全く木々も違うし空気も違う。
そよぐ風が気持ち良いし、直ぐにそんなことは気にしなくなるが…

そんな森に囲まれたログハウスが彼らの今の住処。
いきなり変わった光景にやはり驚いているらしい少女の手を取りながら近づけば、
此方が声をかける前に扉が開く。

「くーねぇ!」
「イディちゃん、こんにちわ…っとっと」

勢い良く階段を駆け下り、飛びついてきた幼子。
ヨクトの遣い魔の一人…スーシャをちっちゃくしたような印象の女の子。
何となく予想していたから受け止められたけど…相変わらずパワフルだこと;

「やっほーイディ。今日も元気ねぇ」
「うん! フロゥもくーねぇもげんき? …って、あれれ?

 ……おねーちゃん、だれ?」

連れてきた少女の存在に気が付いて、幼子――イディちゃんが問いを発する。
ちょっと警戒したところを見ると、本気で知らないらしい。
もしかしたらこの子のことを知っているかも…と期待したのだが…。
遣い魔である彼女がこの反応では、やっぱりヨクトの知り合いでも無いかも。

無駄足だったかもしれない、そんな不安が脳裏を掠めつつも
ともかくヨクトに会わせてみよう、もし知り合いじゃなくても
便利屋だし、会社の人脈で何とかなるかもしれない。

そう思って口を開きかけたその時。

「こらイディア。扉は開けたら閉めろと何度言ったら―――

 お? なんだ、来てたのk「おじ様!!」」

目的の人物がひょいっと扉から顔を出し私達に気が付いて、声をかけ終わるより早く。
今まで黙っていた問題の少女が私の手を振り払い、一直線に駆け寄るとヨクトに抱きついた。
それはもう、先ほどのイディちゃんを見事に再現…こちらは駆け上がる方だが…したかのよう。

いきなりの展開に私とフロゥ、そしてイディちゃんが唖然としたのは言うまでも無い。
そして、飛びつかれたヨクト本人も――彼にしては珍しいことに――情況に対応できずにいた。

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