「この国はどうなってもいい。でも、あの国は…」
今や国際的な信用は、完全に失墜している。
このまま連合を続ければ、二ヶ国とも遠くないうちに滅ぼされるだろう。
国家の根本に矛盾を抱えつづけているが故に。
その歪みが国際協調に沿わず、敵視される可能性が高いが故に。
この国はそうなっても構わない。
植民地になったところで、気にするものは殆ど居ない。
けれど、あちらがそうなるのは耐えられない。
今回の信用失墜の現況はすべて此方なのだから。
ならば…少なくともあちらは生き残れるなら…
連合解散を。
理性はそう言っていた。
だが、感情は、心は、全く正反対のことを叫んでいる。
共に滅ぼされてもいい、一蓮托生だと言ってくれたのだから
例え主権国家として再起不能な状況に陥るとわかっていても
このまま、あの方の、
(止めろ……・………・・!!!)
「……………………っ!!!」
声にならない叫びを上げて、『彼』は意識を取り戻した。
それと同時に、今まで渦巻いていた思考と感情は全て暗闇に吹き飛ばされる。
ただ、激しい葛藤の残滓として、鼓動だけが早鐘を打ち続ける。
何も考えずに目を閉じて鼓動が落ち着くのを待ち、それから、深く深く息を吐いた。
(今のは……)
忘れもしない、だが、普段は封印している少し昔の記憶。
『彼』のではなく、『彼女』の。
この世界に来てから暴走することの無かった、魂に刻まれた記憶の感情。
それを思い出すような、引き出すような会話をした覚えも無い。
何故、今になって急に…?
いぶかしむ彼の手元で、笑うように淡く青い光が爆ぜる。
(…ああ…そうか、お前が…)
苦笑しながら視線を光へ向ける。
手元にあったのは、淡い青の光を纏う両手剣。
久しぶりに―――いや、『彼』が扱うのは初めて―――振るうことになったそれの、
手入れの途中で転寝をしてしまい…剣から不興を買ってしまったようだ。
その銘の由来となった名を持つ人の雰囲気と本当に良く似ているために、
あの頃の記憶が引き出されたのだろう。
「悪ぃ、ちと疲れてたのさね…もっかい最初からやるから、さ」
だから、余り過去のことを思い出させないでくれ。
嫌なことばかりではない、楽しい思い出もあるけれど。
貴殿の笑顔を思い出す度…俺でも、懐かしくて切なくて、悲しくなるから。
