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幕間:手紙

『拝啓
 DancingMarionettes 責任者様

 いつもお世話になっております。
 私は“Sternenzelt”が一員、翼人(ヨクト)と申します。
 御社から当PTに派遣して頂いているラルフ・リィステイル氏について
 ご連絡したい事があり、この手紙を差し上げました―――』

続き

ココまで書くのに所要時間約10分。…掛かりすぎだろ。
今まで公的文書の類は全部本人格が書いてきたからか、俺には難しい。
これを公的文書というかは微妙だけども。
…つーかそもそもの書き出しコレであってんのか?

ま、気にしてもしょうがないや、とりあえず最低限の礼節が守れていれば。
もうちょっと気にしろってドコからか突っ込まれそうだけども…
気にしないで続きの諸々をしたためる。

「何書いてるの?」

暇だったのか眠くなかったのか、ふわりと本人格が現れる。
もちろん半透明の幽体離脱スタイル。大分慣れてきたらしい。

「おぅ。ちと手紙をな」
「珍しーっ、椰子が手紙なんて…ユエに送って以来じゃないの?」

彼女は興味津々の眼差しで書きかけの手紙に目を落とし、途端、眉根を寄せた。

「…………これ本気…?」
「本気じゃなきゃそもそも書かねぇと思うさ」

肩を竦め、ついでに軽い溜息一つ。

内容はラルフがホワイトデーにしてくれたことに関する連絡。
何をしてくれたか物凄く簡潔に言うと、感謝の気持ちが有り余って
公園にお菓子の家ならぬお菓子の小屋を建てた、んだよ!
しかも真面目に喰える菓子で。あ、床は違ったか。

いやもうマジで…冗談も大概にしろってレベルを凌駕してたさね。
あのリュエリアでさえ言葉を失ってたもんな。
しかもコレがまた凝った作りで…美味かったから手に負えない。
更に言えば善意から出来てるから余計に手に負えない。
物事には限度があるって怒れば良いんだろうが…って本人格が叫んだか。
でもあれは30倍返しについてのツッコミだったような?
どうみても3000倍以上の返しになってたと思うが。

「…そりゃ、あれは凄かったけど…だからってあちらの本社に連絡しなくても…
 直接本人に言えば済むことでしょう?」
「まぁな。ま、でも、一度こういう形でお灸据えるのもありだろ?
 ラルフと直接じゃなくて、あちらとこちらで契約結んでるわけだしさ」
「そうだけど…、実際ラルフさんは良くやってくれてるじゃない。
 彼が居なきゃうちのPT此処まで色々出来てないのも事実だよ。
 あの位は大目に見てあげても…」
「あの位ってレベルさ?アレは。
 よくよく考えたら公的な場所に私的なもん建てたんだぜ?」
「…それを言われると辛いなぁ」

ふう、っと溜息。

「何、俺だって人員変えてもらおうとか、減給してくれって言うわけじゃないさ。
 ラルフのことはすげぇ気に入ってるし、変えられたら困るさね。
 でも、“親しき仲にも礼儀あり”、“過ぎたるは及ばざるが如し”ってのを
 会社としてきちんと社員教育してくれよ?っていうだけの話で」
「う~~~~ん……」
「ちゃんと普段の仕事振りについても書くさね。非常に助かってるって」
「…むしろそっちを先に書いてよ。それから指摘するなら、黙認する」

―――こいつ、本気でラルフのこと気に入ってんだな、人として。
判らなくもない。俺自身このPTのメンバーは皆好きだ。
もちろん、ラルフのことも、リサ、アルト、継音のことも。

「わーったわーった、書き直すさね、そういう風に」

だから机の上からどいてくれ、等とやり取りした後。
本社の場所を知らない俺等は、ラルフに内緒でリサとアルトに頼み、
(もちろん何かしらの報酬を渡さないといけなくなったが…)
DancingMarionettes本社へ手紙を届けて貰ったのだった。

なお、手紙の末に、本人格に内緒で黒龍戦についても下記の通り書き足している。

『ラルフ氏当人からの報告が既に提出済みとは思いますが、黒眼の塔での
 彼の仕事について第三者視点から補足を。
 プルトスでのシンボル戦時より、彼は彼にそっくりな違う誰か、に
 入れ替わっていたようです。性格・言動・容姿(眼の色・外見年齢)が異なりました。
 黒龍戦後、我々の知るラルフ氏に戻りましたが、彼自身はその記憶がなく、
 彼の故意による入れ替わりではないと考えます。
 入れ替わっていた人物が誰だろうと、共に戦い、黒龍を倒したことは
 変わりない事実ですので、原因がなんであれ、彼の報告に基づいての
 減給等はできれば避けて頂ければ幸いです』

  • 2010/03/23
  • 創作モノ::幕間/DK