「そう。それはいい経験をしたわね」
穏やかに、それでいてどこか妖艶な響きを含みながら彼女は微笑む。
「……否定はせんが。に、しても落ち着きすぎだろ」
小さく溜息を吐きながら、彼女に相対する青年は苦笑する。
彼が彼女を招いたのはただ茶会をするためではない。
彼女の娘が力ある者との戦いで傷つき倒れた、という報告を使い魔から受け
流石に連絡するべきだと思って呼んだのである。
彼女の伴侶とその息子に知られないように、というのは少々骨が折れたが。
「そう? 確かに危ない目にはあったかもしれない…
初めて“死”を間近に感じたかもしれない。
けれど、それで命を落とす事は無いのでしょう? 狼狽するなんてありえないわね」
青年の言をあっさりと退け、出された茶に優雅に口をつける。
「…序に言えば…心配すらしていないわよ?」
「おいおい……」
「だって、私とあの人の娘だもの。加えて、この世界には貴方が居るし」
にっこりと告げられた内容に青年はあからさまな溜息を吐く。
「ったく…アイツがここに来たのはやっぱお前の差し金か」
「差し金だなんて。私はあの子に何も言って無いわ」
「言わなくても記憶を引継がせたろう。同じ事だ。
――まぁいい。
じゃあ、今後同じ事があっても気にしなくていいんだな?」
「ええ。
……次に会う時どれだけ成長しているか…ふふ、今から楽しみね」
