「故郷に戻るんだって?」
居候たる少年が席を外している隙に、家主たる青年は
彼のペット…もとい、家族である二人に問うた。
灯りに追いやられ、部屋の隅に圧縮されていた影達が揺らめく。
最初はほんの漣程度。次第に振幅が大胆になり、溶岩のように
ぼこぼこと膨れ上がり始める。
幾ら背後で起きている出来事とはいえ、それに気が付かない筈が無いのに
部屋の主―――青年は作業場所と定めたそこから動こうとも、いや、
振り返ろうともせず、ただ黙々と作業を続けていた。
如何に禍々しい現れ方であったとしても、歓迎こそすれ
拒絶すべき相手ではないことを知っていたから。