「そう。それはいい経験をしたわね」
穏やかに、それでいてどこか妖艶な響きを含みながら彼女は微笑む。
「ねーねーディ君、これは使える?」
丁度僕の背後となる棚の中身を確認していたスィン嬢が問う。
何を見つけたのだろうと振り返れば
「…!!! だ、駄目ですよそれは!! それは危険物ですッ」
あわててスィン嬢の手から奪いとり、直ぐに元の棚にしまう。
ついでに封鎖の呪印も仕掛ける。
なんでこんなものまで貯蔵しているんだと心の中で叫んでから、主人や僕らだったら
全く害の無いものだという事に思い当たって溜息をついた。
良く見なければそうだとわからない…いや、知らなければ確実に見落としてしまう、
そんな木々にカムフラージュされたゲートをくぐれば、ぐらりと世界が揺らぐ。
前後左右上下がわからなくなる浮遊感と、それに伴う一瞬の気持ち悪さ。
何度経験しても慣れない感覚を我慢すると、直ぐに心地よい森の香りに包まれた。
青がかった銀。
青銀、には届かないけれどそれに近い色合いの髪と眼を持つ少女。
椅子に座って小首を傾げたその姿は、精巧なビスクドールを思わせた。