人差し指で宙をなぞり描くは淡く輝く魔法陣。
いつもなら完成次第崩れて床に成果を残すそれを、今日は崩さぬまま
ふっと息を吹きかけて用意しておいた鏡面へと張り付かせる。
刹那、部屋の中を映し出していた銀色の鏡面は
全てを飲み込むような漆黒の鏡面へと変じ。
そこに部屋とは違う光景と人物を映し出す。
「…よう。久しぶり」
明らかに不機嫌だとわかるその人物に、翼人は苦笑いを浮かべながら声をかけた。
人差し指で宙をなぞり描くは淡く輝く魔法陣。
いつもなら完成次第崩れて床に成果を残すそれを、今日は崩さぬまま
ふっと息を吹きかけて用意しておいた鏡面へと張り付かせる。
刹那、部屋の中を映し出していた銀色の鏡面は
全てを飲み込むような漆黒の鏡面へと変じ。
そこに部屋とは違う光景と人物を映し出す。
「…よう。久しぶり」
明らかに不機嫌だとわかるその人物に、翼人は苦笑いを浮かべながら声をかけた。
ふっと不安を感じて、まどろみから目覚める。
イディを起こさないようにそっと寝台から抜け出し、リビングに向かえば
窓際に腰掛けて、じっと夜空を見上げる主人の姿。
明かりもつけず…新月の夜空から窓から入り込む僅かな星明りに照らされ闇に浮かぶ姿は
触れたら霧散しそうな位儚くて、声をかけるのが躊躇われる。
そんな僕の気配に気がついたのだろう、主人はこちらを見て
少し驚いたような顔をしてから笑みを浮かべた。
「どうした?」
「いえ…、主人の『揺れ』を感じたものですから」
誤魔化しても仕方ないので素直に応える。
返事を聞いた主人の笑みに苦いものが混じった。
「………寝てたからバレねぇと思ったのになぁ」
「いい天気なのに…惜しいなぁ」
「ホントに…ピクニックならこのままで良いんだけど」
隣に実体を伴って浮かぶ椰子に相槌を打ち、一言付け加える。
「でもしょうがないじゃない?」
椰子からの返答は苦笑一つ。
わかってるさ、の意。
小憎らしい位よく晴れた空。
でも、だからこそやりがいがあるというもの。
Tethysに魔力を注ぎ込み、支配域を広げていく。
いつもは範囲を限定し濃く支配するのだが、今回は違う。
薄く、広く。区切られた敷地の外にも影響する位に…
程なくして、太陽は徐々に翳り始めた―――
白い装束の青年―――ナセルが翼人に保護されて数日。
使い魔が負わせてしまった負傷は、カーシャ病院に(ごろごろと転がって)行ったお陰で
綺麗に完治したナセルが、何処へ出かけて戻ってきたのは丁度お菓子時。
訪ね先で大量の彩り鮮やかなお菓子をホクホク顔で貰って来た彼は
台所と食器棚を勝手に拝借して、元々持っていたらしい茶葉で茶を淹れ
持ち帰ったケーキを始めとするお菓子類を見目良く皿に盛り付けていく。