『拝啓
DancingMarionettes 責任者様
いつもお世話になっております。
私は“Sternenzelt”が一員、翼人(ヨクト)と申します。
御社から当PTに派遣して頂いているラルフ・リィステイル氏について
ご連絡したい事があり、この手紙を差し上げました―――』
『拝啓
DancingMarionettes 責任者様
いつもお世話になっております。
私は“Sternenzelt”が一員、翼人(ヨクト)と申します。
御社から当PTに派遣して頂いているラルフ・リィステイル氏について
ご連絡したい事があり、この手紙を差し上げました―――』
ゆらり。
今は只の装飾布として纏っているだけ、であるはずのTethysが揺らめき、
大気を歪ませ鋭い刃を持つ氷を次々と生み出す。
まるで溢れ出す怒りの感情をそのまま顕したかのように、次々と。
俺自身はTethysに一切の魔力を注いでいない。
しかし、特殊な創り方をされたその布には明らかに魔力が注ぎ込まれていた。
しかも尋常な量ではない。
俺以外にこの布を扱える魔力を注げるのは、只一人…
黒眼の塔最上階。
何度見ても美しいその巨躯の色は、煌く闇色―――そうだな、宝石に例えるなら…
黒真珠とオニキスってところか。
緑から紫の艶を持つ感じは黒真珠のそれ。
ただ、鱗の硬質な感じはオニキスのそれ。
両方の色と質感をあわせると丁度あんな感じになると思う。
赤龍と白龍とはまた違った美しい鱗をもつ龍が4体、空から俺等を威嚇していた。
イブラシル大陸はパラスから船で海峡を越えた冒険者達が、初めて新大陸の地を踏む街、港町プルトス。
この街にはクラン『Sternenzelt』の拠点…クランシンボルが存在する。
建てられたのはそう新しい話ではない。だが、不思議と今まで喧騒に包まれることがなかった
プルトス郊外のその拠点は、いつもの平穏さを失い、俄かに慌しくなっていた。
――――2月14日。聖バレンタインの日、と異界で言われる日。
その日に、初めて『来客』を迎えることになったせいである。
クランシンボルへの来客は、決まって1つしかない。
その砦を破壊するか占拠するか…、いずれにせよ武力行使によってそのシンボルから該当クランを追い出す為にやってくる。
よって、拠点を構える側はそれに対抗するため、傭兵を雇ったり、拠点に異変があったときに
旅先からクランメンバーを一時的に転送するための魔法を仕込むなどの手段を講じる。
このプルトスの『Sternenzelt』の砦が俄かに慌しくなったのも、来客という変事に対応するため、
クランメンバーの一部が砦に転送されたからなのだが…
その慌しさは、どう見ても砦の存亡を賭けた準備とは程遠いものだった。