青がかった銀。
青銀、には届かないけれどそれに近い色合いの髪と眼を持つ少女。
椅子に座って小首を傾げたその姿は、精巧なビスクドールを思わせた。
私がその少女に出会ったのは働かせてもらっているディアス西区の花屋、
その店内で、である。
常連客の一人が大通りで途方にくれていた彼女を店に連れて来たのだ。
正確には…私のところへ連れてきた。
迷子だったら町の警吏というか警察というか。
そういうところに連れて行くべき所、何故私のところへ?
って感じだったんだけど…
なんでも、この近くにいるはずの羽の有る人を探している、と少女自身が言ったらしい。
亜人の多いこの街とはいえ、この付近で羽持ちといえば私に限られる。
それを知っていた常連さんが店に連れてきたらしいのだ。
とはいえ、私はこの少女に見覚えは全くない。
ちらっと肩に止まっているフロゥに視線をやると、彼女も知らないと首を横に振る。
「あら、クーちゃんの知り合いじゃないのね?」
「ええ…」
私の困惑を見て取ったのか、店長が苦笑う。
少女の方も私を見て困った顔をして、
「他…いないの?」
と、途切れ途切れに、というよりは片言に近い言い方で問う。
あれ…ちょっとイントネーションもおかしいような気が…
「他って言うとクーちゃん以外はフロゥちゃんぐらいよねぇ。
たまにならスーちゃんも来るけど、彼女はこの近くに居ないし
何時来るかわからないから…」
店長の言うスーちゃん、は、スーシャのことだろう。
今はヨクトと名乗る青年姿が多いが、此処に来る時は今もスーシャのままらしい。
彼女…いや、彼らはこっちに拠点を戻したものの、仕事の関係からかあまり姿を見せない。
私が最後に会ったのも例の二日酔いを起こした時だ。
「あ、だったら私達が連れて行ったら?」
「おや。スーちゃんの住んでる場所知ってるの?」
フロゥの提案に店長が意外そうな顔をする。
「ええ、まぁ…。でも、仕事終わってから行ったら今日中には戻れないですし」
彼らの今住んでいる場所はどこ、とは言えない場所にある。
地理的にはどこ付近とは言えるけど…物理的にそこに住んでいるわけじゃない。
ただ、出入りできる箇所があるのを知っているだけ。
それはディアスから旅慣れた人の足でも往復で半日はかかる。
しかも彼らがいるとは限らないし、居ても事情説明やらなにやら…
仕事が終わってから出かけたら、確実に今日は戻ってこれない。
すなわち、明日の仕事には間に合わない。花屋の朝は早いから。
そんな言葉の裏の心配に気が付いるのかいないのか。
店長はいつもの笑顔を取り戻しつつ
「今からなら?」
「え? 今からなら…夜遅くなると思いますが…多分戻れるかと…」
「充分充分。じゃ、クーちゃん、スーちゃんのところまでこの子連れてってあげて」
「今からですか?」
「今からよ。善は急げって言うでしょう?
配達の依頼も来てないし、今のうちに行って来ちゃって」
ほらほら、と急き立てられ。
私と少女とフロゥと。まとめて店の外に追い出されるまで
多分、5分もかからなかったに違いない。
