「いよいよ、ね」
『…? 何だ、緊張してるのさ?』
門へと向かう道を歩みながら、思わず口にした言葉に
椰子はとても意外そうな声を上げた。
「この柄はどうでしょうか。これも似合うと思うんですよ」
「わ、それも素敵!うんうん、似合いそう♪」
「いいですね。それに合わせるなら帯は―――」
「シックに行くならこの帯だろうが、あえてこちらでも良いかもしれん」
「帯がそれなら…帯紐と伊達襟はこの辺で、帯留はこの辺かしら?どう?」
「えっと…そうですね…右から2つ目の…それがいいなって思います」
「うーん、私はこれがいいと思うんだけどなー、格好良いじゃん?」
「姉様…それは自分用の時に選んで下さいね?」
吹き渡る風が髪を揺らす。
足元からは心地よい土と草の香り。
―――もの凄く久しぶりな大地の匂い。
降り注ぐ陽光も暖かくて心地良い…まぁ、時期的に寒くもあるけど。
その冷えも自然のこと、長い間冥府の底に居た私達には凄く新鮮な感じ。
ここはイブラシル大陸は西北の地、イブリス大平原。
大平原の名に相応しく、360度見渡す限り平原が続き…北側の遠くに、黒々とした塊が見える。
位置的にあれが噂のメフティス火山だろう。
「「招待状?」」
私と椰子の声が綺麗に重なる。
何があったのかわからないけど、やけに上機嫌+有無を言わせない笑顔で
ラルフがPT全員にそれぞれ手渡したのは、魔法陣の刻まれた封筒。
ちなみに今のラルフは大量の封筒が入っているらしい袋を担いでいるせいで、
赤い服と赤い帽子を着けてたら“あわてんぼうのサンタクロース”って感じ。
まぁ、イブラシル大陸にサンタが居るのかは知らないんだけど。クリスマスがあるのかもね。
ん?ハロウィンはあったからクリスマスもあると考えるのが妥当か。
…なんか似合いそうだし、折角だから突貫で衣装作ってあげようかな。
いやしかし女装の件も翼人化の件もあるし…
兎も角、薄々予想しながらも誰からの招待状なのかと封を開け、真っ先に署名を確認する。
そこには流麗な字で『DancingMarionettes社長 クラウス・リィステイル』と記されていた。